menu
頸椎椎間板ヘルニアの治療・手術ガイド » 【治療編】頸椎椎間板ヘルニアの気になるQ&A » 手術にはどんなリスクがある?

手術にはどんなリスクがある?

頸椎椎間板ヘルニアが悪化してしまうと、手術という手段を講じなくてはなりません。その際に考えられるリスクについて説明していきます。

頸椎椎間板ヘルニアの手術のリスク

頸椎椎間板ヘルニアの手術は、首の前方から行う「前方除圧固定術」と、首の後方から行う「後方除圧術」に分けられます。

前方除圧固定術では、首の前面に位置している気管・食道などがあるため、術後に声がかすれてしまたり、飲み込みが難しくなる嚥下障害が起きる可能性があります。その他、食道・頸動脈の損傷などもリスクの一つに数えられています。

後方除圧術では、首の後ろから直接患部にアプローチをかけていくため、頭を支える筋肉を切開する必要があります。この影響によって、術後に肩こりを発症するケースが多いと言われています。

頸椎を取り除く手術では、頻度としてはまれであるものの、脊髄や神経に刺激を与えてしまい、感覚神経に悪影響を及ぼす可能性があります。感覚障害として残るだけでなく、後々まで残るしびれや麻痺、脊髄損傷のリスクも考えられます。

手術のリスクについて、もっとも頻度が高いと言われているものが上肢の拳上障害です。肩、腕が上がらなかったり、もしくは腕を上げる時に痛みが生じるというものです。別名「C5麻痺」とも呼ばれていますが、一過性で終わるものも多く、発症率は5%とあまり多くはありません。

その他で考えられる手術のリスク

その他、非常にまれに起こるリスクとしては、深部静脈血栓症(エコノミー症候群)が挙げられます。

こちらは頸椎椎間板ヘルニアの手術の際に使用する全身麻酔の影響によるもので、2時間から4時間ほど体を横たえているため、足元の血流が低下して起こる症状です。

足に血液の塊ができてしまうと、それが血管につまってエコノミー症候群に似た症状を起こしやすくなります。そのため、手術後はストッキングの着用などを行って予防策を講じるのが一般的です。

手術に際するリスクとしては、1%以下の確率で手術した部位が細菌に感染する創部感染が挙げられます。こちらは発熱や痛みなどの症状がみられます。

その他、採骨部の痛みやしびれ、移植した骨の脱落や骨折、しびれなどがあります。近年の治療法ではこれらの症状の発生頻度はあまり多くはありません。患部のしびれや痛みについては、頚椎椎間板ヘルニアの手術以外にも、腰のヘルニアの手術などにもみられます。

リスク軽減するための対策

頸椎椎間板ヘルニアの手術におけるリスクを減らすためには、手術の実績が豊富であり、最新の設備を備えている病院を選ぶことが大切です。首まわりはデリケートな部分なので、手術のノウハウを持ち、正しく執刀できる医師を選ぶようにしましょう。

手術においては専用の手術用顕微鏡を使い、神経や血管などのデリケートな部位を拡大しながら患部に到達するため、慎重を期して行えばリスクを最小限に抑えることができます。

しかしヘルニアの症状や程度は個人差があるため、適切に治療を行うには実績が豊富な医師に相談することをおすすめします。

手術とその後を不安なく送るために、手術の内容や方法、術後のアフターケアやリハビリなどについて、詳しく説明を聞いておくことが大切です。

医師選びのポイントとして、医師には患者さんに対して丁寧に説明をする義務がありますので、実績が豊富で、最新の技術を取り入れているだけでなく、患者さんへのサポート体制が整っているかもチェックしておきたいところ。

手術前には術式について分かりやすく説明がありますから、十分に納得してから手術に入ってもらうようにしましょう。また術後の経過観察についても、こまめに行ってくれるところを選ぶと安心です。

手術で後遺症が残ることはある?

頸椎椎間板ヘルニアの手術は首の前方と後方の2ヶ所からそれぞれアプローチしていきますが、手術によって後遺症が起きるリスクはゼロではなく、感覚神経などに麻痺が残ったり、脊髄損傷といったリスクが考えられます。

巧緻運動障害

手術後に自力で歩行できるようになっても、しびれなどの感覚障害が残ることがあります。また、腕は上がるけれど手先の微細な動きができなくなる「巧緻運動障害」が残ったりすることはあります。

感覚障害

しびれのような感覚障害は、神経根の圧迫による痛みであれば、術後の後遺症としては比較的軽いものに分類され、手術によって完治できるケースが多いです。

後遺症が起きる可能性については、患者さんの状態や年齢などにより異なり、首の前と後ろのどちらからアプローチを行うかによっても異なります。

首の前から手術を行う「前方除圧固定術」では、食道・気管・頸動脈などの重要な器官が通っているため、それらを損傷するリスクを避けるため、後方から除圧を行うのが理想的です。

前方から除圧を行うと、食道や気管のほか、頸動脈などを傷つけてしまうリスクがあります。もっとも重い後遺症としては、手足が動かなくなる「四肢麻痺」が挙げられます。

これは手術中に脊髄に力が加わることによって感覚障害が起き、それらが悪化することによって起きるものです。後遺症としてはまれではありますが、脊髄の損傷レベルによっては完全麻痺になるリスクもあると言われています。

肺梗塞

また、手術の後遺症として肺梗塞と呼ばれる症状が出る場合があります。椎間板が飛び出している部分、いわゆる「ヘルニア」が1ヶ所の場合、手術時間は1.5時間から2時間かかります。2ヶ所になるとその倍の時間がかかります。

手術中は全身麻酔のため、患者さんは自分で手足を動かすことができません。その結果として、血管の中に血液の塊ができてしまい、術後に動いた時に塊が流れていき、肺の血管に詰まってしまいます。

肺梗塞はいわゆる「エコノミークラス症候群」と似た症状で、小さな血栓であればすぐに分解されますが、大きな血栓は分解までの時間が長くなるため、損傷が広い範囲に及びます。

肺梗塞が長引く場合は死亡のリスクも付いて回ります。2時間を超える手術の場合は、肺梗塞による後遺症のリスクを考慮しなくてはなりません。

その他、手術によって脊髄のまわりを包んでいる髄液が外に漏れ出すようになる、「髄液漏(ずいえきろう)」と呼ばれる合併症も存在します。

参考:(PDF)日本臨床麻酔学会誌: 肺梗塞[PDF]

後遺症を軽減するための対策

頚椎椎間板ヘルニアになった場合は、発症時の症状がどの程度まで進んでいるかによって予後がある程度予測できると言われています。頸椎椎間板ヘルニアを発症した時点で自力で歩けるか、筋力低下の有無、排尿障害や失禁などの障害の有無などから予後を判断することができます。

頚椎椎間板ヘルニアの場合、術後の回復レベルは年齢や体のコンディションなどが左右すると考えられています。20代の若い人の場合、術後は目立った後遺症が現れず、元の通りに日常生活に復帰しやすい傾向にあります。

術後にはみられない症状が数年後に再発するリスクはありますが、この場合は後遺症というよりも再発するリスクと考えられ、必ずしも手術によって後遺症が残るというわけではありません。

治療効果や回復レベルは、麻痺の程度や脊髄内部の状況によっても変わります。手術が迅速かつ確実に行われた場合、目立った後遺症が現れないとも言われており、安全に手術が終了し、予後も良好というケースが多いです。

手術による後遺症のリスクを減らすには、症状が進まないうちに迅速に手術などの治療に臨むこと、さらには術前・術後の日常生活の動作や姿勢などのクセを正すことが大切です。

日常動作は無意識的に行うものですが、これが痛みを助長している場合があり、術後の予後を悪くする要因ともなります。リハビリテーションなどを正しく受け、悪い姿勢やクセなどを正すことで、後遺症のリスクを減らすことができます。