首が痛い症状が出る病気は、頸椎椎間板ヘルニアに限りません。似たような症状が出る病気が他にもいくつかありますので、紹介しましょう。
頸椎の間にはクッション代わりとなる軟骨(椎間板)があります。頸椎症は、この椎間板が年齢とともにすり減ることで頚椎が変形し、脊髄や神経を圧迫するため、首・肩・手に痛みやしびれ、または力が入らないなどの症状が起こります。
頸椎は胸椎や腰椎と比べ、動かす頻度が多く範囲も広いので症状が進行しやすいのが特徴です。症状の進行速度は緩やかですが、転倒した際のケガや頭・顔への衝撃が原因になり脊髄麻痺といった重大な事態を引き起こす可能性があります。
歩く、手指を動かす、トイレに行くなど日常おこなっている行動に支障がある場合は手術を考える必要も。そうでなければ多くの場合、頸椎カラー(固定装具)や薬による保存療法で治療をおこないます。他にも温熱療法、ベルトで引っ張り頸椎にかかる圧力を軽減するけん引療法、マッサージをおこない代謝機能の改善を図る理学療法などがあります。
手術をする場合、症状が悪化してからでは術後の回復に影響を及ばしてしまう可能性があるので注意が必要です。痛みや痺れで歩けなくなるほど症状が悪化する前に、担当する医師と保存療法をおこなうのか手術を選択すべきか相談しておきましょう。
普段の生活でできる予防や改善としては、首を大きく動かさない、背中を丸めず姿勢を良くしておくなどがあります。頸椎に負担がかからない状態を心掛けることが大切です。
首の骨を支えている靭帯が何らかの理由で分厚くなり、骨化することで脊髄や神経を圧迫します。そのため、首や手足にしびれを感じるほか、ひどい場合は手足の動きが不自由になることもあります。
黄色靭帯骨化症と呼ばれることもありますが、後縦靭帯骨化症と同じ病気です。
50歳前後で発症することが多く、女性よりも男性の方が多いのも特徴です。また、糖尿病患者や肥満の人も発症する可能性が高いことが知られています。
発症する原因は1つではなく、糖尿病や肥満以外にも遺伝、性ホルモン、カルシウムやビタミンDの代謝異常、老化現象、全身的な骨化傾向、椎間板脱出などが挙げられています。家族内発症が多くみられるので、遺伝子の関連が有力とされています。しかし、必ずしも遺伝するわけではなく、複数の要因が関連し合って発症するとされています。
治療法としては、頸椎カラー(外固定装具)で首への負担を減らし安静を保つ方法や消炎鎮痛剤を使用した薬物療法などがあります。症状が進行した場合は手術する可能性もあります。
頚椎症性脊髄症は、長年続けてきた姿勢やスポーツの影響で骨や椎間板が変形し、骨の形が刺のように飛び出してしまったり、骨を繋いでいる靭帯が緩む、もしくは分厚くなったりする病気です。
これにより脊髄が圧迫され、手足に障害が起こります。
加齢による頸椎の変性・変化で脊柱管が狭くなることも原因の1つとされています。50歳以降に起こりやすい変化で、男性の方が発症する可能性が高いとされています。もともと脊柱管が狭い人の場合、30代~40代で神経症状がでることも。比較的軽い衝撃でも、転倒や顔・頭への打撲で神経症状が見られることもあり、注意が必要です。
加齢によって頚椎が変形し、痛みやしびれを伴うのが頚椎症ですが、頚椎症性神経根症は頚椎症によって手先に繋がる神経根が圧迫される病気です。
症状は脊髄症と同じく、首から手にかけて痛みやしびれが伴い、左右両側に症状が出ることも珍しくありません。重症化した場合は下半身にまで症状が及び、歩けなくなることもあります。
原因の1つにはストレッチやマッサージで首をそらしてしまうのも原因として挙げられています。
症状が重くても治療の方法として手術を選択するケースは少ないのが特徴です。安静にする、薬を飲むなどの保存療法で痛みを軽減できます。痛みで日常生活に支障がでてしまうなど症状がひどい場合には手術がおこなわれます。手術方法は前方除圧固定術が多いようです。
頸椎症性神経根症の予防では、普段の生活から姿勢を良くすることも大切ですが、首のストレッチなどで頸椎を伸ばしすぎないように注意しましょう。
背骨の中を通る脊柱管には脊髄や脊髄神経がありますので、脊柱管の直径は前後16mm以上であるのが正常とされています。
頚部脊柱管狭窄症は、首にある脊柱管の直径が16mm以下と狭い状態になることをいい、脊髄や脊髄神経が圧迫されることで手や首回りにしびれ・痛みを感じるようになるのです。
脊柱管が狭くなる理由は、成長過程によるものや交通事故などさまざまですが、生まれつき狭い場合は発育性頸部脊柱管狭窄症といいます。
黄色靭帯の変性も原因の1つとされています。黄色靭帯には骨と骨を繋ぐ役割がありますが、加齢とともに筋力が低下してくると代わりに体を支えるために大きくなります。大きくなった黄色靭帯が脊髄を圧迫してしまい、痛みや痺れなどの症状に繋がります。
治療法には薬物療法やブロック注射などがあります。根治を目指す場合は椎弓形成手術が一般的におこなわれています。圧迫の原因となっている部分を摘出し、脊柱管の空間を広げる手術です。
頚椎後縦靭帯骨化症が脊柱管の前面を構成している後縦靭帯が骨のように硬くなってしまう病気なのに対し、脊柱管の後面を構成している黄色靭帯が硬くなる病気を頚椎黄色靱帯石灰化症といいます。
靭帯の場所こそ違うものの、後ろを通る脊髄神経を圧迫するのは同じなので、首まわりや手のしびれをはじめ、ひどくなれば下半身にまで影響が及びます。
胸椎から腰椎にかけた胸腰移行部に多く、脊柱全体で発症する可能性がある病気です。単独の発症も多いですが、脊柱管内靭帯骨化として頸椎後縦身体骨化症や胸椎後縦靭帯骨化症と合併して発症することもあります。
治療は神経が圧迫されたときにおこなわれます。安静にする鎮痛剤を飲むなどの方法がありますが、症状が悪化した場合には手術が必要です。手術後も転倒や衝撃を与えないように気を付けなければなりません。
頚椎すべり症は、脊髄を構成する椎骨がずれてしまう病気のことです。
脊椎は「頚椎・胸椎・腰椎・仙椎・尾椎」の5つに分かれているのですが、腰椎については5つの椎骨によって形成されており、椎間関節や椎間板が傷つくことでずれてしまうのです。
そのため、頚椎すべり症では腰の痛みや足のしびれが起こり、歩き続けることが困難になる人も少なくありません。
すべり症には後ろにずれる後方すべりと前へずれる前方すべりがあります。ほとんどの症状が前方すべりです。前方すべりの中からさらに3つにわけられ、形成不全性すべり症、分離すべり症、変性すべり症があります。
脊椎の成長に問題がある場合に発症しますが非常に少ない症例です。
分離症が原因とされています。分離症は背骨の後ろと前の部分である椎体と椎弓が離れてしまう状態です。離れた椎体がすべってしまうため分離すべり症と呼ばれています。
女性によくみられ50~60歳に発症することが多いです。女性ホルモンが減少し、骨粗鬆症などで骨が支えられなくなってしまうのが原因と言われています。
すべり症の治療は安静にする、薬を飲む、コルセットの装着で負担を軽減するなどの保存治療が用いられています。症状がひどい場合や保存治療でも改善しない場合には手術をおこなうこともあります。
首に痛みが生じる病気にはさまざまな種類があり、これらの病気を自分で判断するのは極めて困難だといえるでしょう。
症状は同じであっても、病気の原因や治療方法は違ってきますので、首に痛みを感じた際には自分で判断せず、早めに専門医の診断を受けるのが安心です。